BENCH
受注型から発信型のものづくりへ
共和鋼業株式会社が製造する菱形金網は、慣れ親しんだ運動場のフェンスや、落石防止のための強靭な金網など、様々な場所に用いられている。大規模な公共事業から家庭の中まで、ありとあらゆる場所に用いられる素材を製造している工場である。また、様々な種類の金網を受注し、素材として納品する傍らで、自社の金網を使った新たな製品開発にも力を入れている。それは代表の森永さんの物づくりへの挑戦的な姿勢を表すものであり、今回のプロジェクトもこの発信型の姿勢を礎に、金網を用いた新たな商品を開発することにした。
金網が持つ温もりの記憶
共和鋼業で触れた菱形金網は、冷たく無機質な金属のイメージとは違うものであった。柔らかくしなり、どこか温かみを感じる手触りと重み。それらは私たちの原体験にある、金網に手を掛けたときの感触や音やたわみのように、いつかの記憶に結びついているようであった。そのアナログな感触を楽しむことのできるモジュール式のベンチがこの「ネットベンチ」である。精緻でシャープな外観と、柔らかくしなって体を支えてくれる座面。菱形金網の製造特性を活かし自由な長さに調節して使うことができるので、用途・シーンに応じて幅広く活用できるモジュールベンチとなった。
Designer's voice
代表の森永さんに初めて会った時、真摯で穏やかな語り口調の裏側にある情熱を感じた気がした。共に過ごすようになって改めて気づかされるのであるが、仕事やものづくりに対する愛情が半端ないのである。金網を用いた自作の鞄を使い、左手には金網の自作アクセサリー。自らがまず使って金網の広告塔となる、その金網愛に溢れる姿勢をみているうちに、その熱量に当てられている自分に気づく。聞けば森永さんは会社を父から継いだ2代目だという。受け継いだモノに対する並々ならぬ決意と責任を側で見せてもらい、このプロジェクトに参加できて本当に良かったと思った。